10年前にアイドルを聴かなかった友人たち
現在は没交渉になっている方も多いですが、昔、mixiというSNSでたくさん友達を作りました。
彼らの共通点は皆、音楽が大好きであるということ。10年前の彼らは、毎週のようにタワーレコードに行ってはCDを買い、夏になればフェスに行き、自分のブログにCDレビューやライブレポを書いていました。彼らと私の違いは、彼らは主にJ-POP、邦楽ロックと呼ばれるジャンルを好んでいましたが、私がそれ以外に、ハロプロをはじめとしたアイドル歌謡曲を愛していたということです。私がアイドルのCDを絶賛してみせると、嫌な顔をすることは決してありませんでしたが、ちょっと呆れたように、特殊な趣味を持ったんだねというスタンスで微笑んでおりました。
2017年の彼らのほとんどは、アイドルを聞いています。当時ロックミュージシャンのCDを聞いてアイドルCDを聞いていなかった友人も、みんなアイドルCDを聞いています。週末にアイドルイベントに出かけています。あの頃は俺のことを特殊な趣味の人だと笑っていたのに!(笑)
でもそうなる理由もなんとなくわかるんです。
音楽好き達がアイドルを聴き出した理由
ロックミュージシャンはシンガーソングライターでもある才能あるフロントマンが歌っていることが多く、都合、見た目の良さには係わらないことも多いが、アイドルは必ず見た目が可愛らしい。
ロックバンドのメンバーはしかめっ面や恍惚とした顔で楽器を演奏しているだけのことが多いが、アイドルは笑顔でダンスを見せて楽しませてくれる。一糸乱れぬ揃った動きで圧倒させてくれる。
ロックミュージシャンは何割かの確率でMC下手だったり、ほとんど喋らずにセットリストを淡々とこなすだけだったりするが、アイドルはトークで楽しませてくれる。得てしてサービス精神が旺盛なステージが多い。
現在のアイドル楽曲は、友人たちが愛したロックミュージシャンが作っていることも多い。
現在のアイドル楽曲は、すでに確立し素晴らしいと評価されたレガシーの音楽を下敷きにしていることが多く、美味しいところ取りであったり郷愁を誘ってきたりする。
ロックミュージシャンは音楽のジャンルによってフィルタリングされることが多いけれど、アイドルはそれに左右されず、どんなジャンルの音楽でも演じることができる。都合、アイドルのアルバムCDはバラエティに富んだ、単調さからはかけ離れた作品になっていることが多い。
逆に音楽のジャンルを絞り込んだアイドルグループもあって、特にライブの盛り上がりが激しいグループの場合は、モッシュ&サーフ&ダイブの熱狂もロックバンドに引けを取らないし、むしろ若々しさで上回っていることもある。
アイドルは色んな意味で「新鮮」であることが多い。
つまり、美味しいところが詰め込まれてるんですね。ラーメンで言うところの「全部入り」なんです。音楽を楽しむという行為において、とても効率がいい。
アイドルは「全部入り」
この「全部入り感」は最近ヒットするもののキーワードでもあります。効率良く多種多様なものが楽しめるという優位性。フェスなんてまさにそうですよね。数日でたくさんの音楽に出会える。自分の都合で見ても見なくてもいいし、タイムテーブルに合わせてギッチギチのスケジュールを楽しんでもいい。ぎゅっと詰まった魅力がある。
このぎゅっと詰まった効率性は、グループとしての歴史の濃さにも直結しています。ロックバンドのメンバーの歴史にも脱退、加入、休止、解散、復活などがありますが、アイドルはそれに加えて発表から卒業のじらし期間だの、メンバーの誰と誰とが仲がいい悪いだの、加入した子の成長だの、前列メン後列メンの入れ替えだの、移籍だの合併だの、握手会やTwitterでの対応だの、追っかけている側の勝手な妄想も交えての有象無象の事件で歴史をどんどん彩ってくるんです。一般的には「若い女の子が若い間に数年やって終わり」というスパンであることも相俟って、グループとしての歴史の密度が濃い。
そんな詰め込まれた美味しさのあるアイドルに、邦楽ロックファンが集まってくるのも、わかる気がします。CDが売れなくなって久しい2017年においても音楽を聴くことを趣味にしている者ならば、一組や二組は、CDを楽しめるお気に入りのアイドルグループを持っていることでしょう。
だけどハロプロは
……。
ただ……なぜか、ハロプロには食指を伸ばしてくれないんですよね……。
……。
ここからは完全に個人の趣味主観丸出しの愚痴文章ですみません。
私は長いことハロー!プロジェクトが好きで、もう20年も、ハロプロを軸としながらいろんなアイドル楽曲を楽しんでいる者です。だからどうしてもハロプロばかりを贔屓目で見てしまう、ってことはわかっているつもりです。でも、音楽のクオリティとして、決してその他のアイドルを下回っている気がしないんです、ハロプロが。音楽的に面白い試みにいつも取り組もうとしているし、メンバーたちの教育もしっかりされているし、みんな可愛いし、何より作品に一定以上の狂気がある。そんじょそこらのアイドルの作品にひけをとっているとはどうしても思えないんです。贔屓目だとはわかっているんですけれども。
何千枚とロックのCDを持っていた私の信頼できる友人たちは、私なんかよりもずっと、音楽というものの選球眼に長けていると思う。そんな彼らがアイドルの曲は聞いているのに、ハロプロの曲を褒めているところを見たことがほとんどなくて……。それはなぜなのか。
贔屓目ついでに無理やり理由を見つけようとしたら、こうです。
「自分で見つけた感」がない
ハロプロにはもう今更「自分で見つけた感」がないんです。新しいグループも新しいメンバーもそれなりには出てくるのですが、結局はハロプロっていう大きな歴史の一部分でしかない。なんか新しい、刺激的なグループが出てきたぞ!(そして俺はそれを見つけた!)という感動が得られないんじゃないでしょうか。CD何千枚も持っているこの俺が、今更ハロプロに? ……みたいなことがあるんじゃないかなぁ、と。勝手な想像ですが。
アイドルの曲を好んで何十年も聴いてる自分としては、たまには自分の選んだ好きな曲をサークルの外側からもほめられたい。今、それがしやすくなっている状況のはずなのになぁ、という思いなのでした。
でも……いいです。だいぶ下火にはなったものの、冬の時代と呼ばれたあの頃よりはずっといい。たくさんの作品に出合えるようになったから。今更周囲の評価なんてあろうがなかろうが関係ないことだった、と思い直しました。だって、きっと十年後も、あなたが飽きてしまっても、私はアイドルの曲を喜んで聴いているだろうから。もういいんです。
長文に最後までおつきあいいただきしてありがとうございました。
筆者プロフィール
《 赤フリにゃーお 》
四十代半ばのアイドル楽曲愛好家おじさん
自分が細々と続けているブログなんて誰も読んでくれないので変名で寄稿してみました。ご掲載いただきましてありがとうございます。


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面白いので コメントします
アプガファンですが ハロプロよく分かりません
ギター少しやっていて 色んな音楽の一つのジャンルとして 聴いています
テレビで見てるだけで満足しなくて
生のライブ行っています
握手会などのファンとの交流見て 面白いと思いました
円生さんの落語で 水茶屋お藤のこと知りました 今で言う喫茶店の看板娘で江戸時代もアイドルがいたのですね 沢山のお店があるから お客呼ぶためのサービスですね
こんな娘のいた店が繁盛したそうで今と変わらない
めっちゃおもしろかったです!
ハロプロはそういう音楽おじさん達が好きそうなイメージがあったんで
ちょっと以外でした。
自分もアイドル好きな中年で
ハロプロもたまにCD買って
リリイベも行くのですが
何故かハマらないんですよね
好きなんですよ
皆さん美少女だしダンスできるし
何より個人の魅力がある
でも、踏み込めない
昔ある人がつんく♂の曲は「反知性主義」だ
と書いていたのを読みまして
合点をしました
それはあるような
大学の応援団のような雰囲気を
ハロプロは持っていると感じてます
ハロプロ、たしかに音楽的な
質としてはしっかりしているのは
わかるんですが、
ボーカルに一定のクセがあって
それが趣味に合わないので、
どうしても避けてしまうんですよね。
好きな人はその部分が合うので、
気づかないのかと。