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宗教法人マラヤ〜教祖山篭りを見送る会〜 最初で最後の”ワンマンライブ”レポート

7/26 宗教法人マラヤ、下北沢SHELTERワンマンライブ

SHELTERに降りる階段は地獄へと続いているのか、それとも極楽に続いているのか—

泥酔して他アイドルの運営と喧嘩物販で手作りの壺(8万円)を売り即完売財布をスられ22万円盗られる深夜に自分で髪を切り坊主に、そして突然の山ごもりによる解散宣言からの、CD1万枚手売り行脚……常によくわからない話題をばら撒き、アイドルユニットなのか、宗教ユニットなのか、自称している通りバンドなのか、最初から最後までよくわからなかった宗教法人マラヤ。彼女たちが山ごもりに入る前に行うツアーのプレファイナル、下北沢SHELTERでのワンマンライブチケットを入手することができた筆者は、途中少し道に迷いながらも会場にたどり着いた。

宗教といえば、迷える者がすがる最後の藁だ。マラヤに救済を求める気持ちと、「終わってほしくない」という気持ちが混じり合った結果、開演時間ギリギリに到着すると、SHELTERはすでに満員近く。すでに数多くの信者が、教祖の勇姿を見届けようと集まっていた。全員、同じ宗教を信じる同胞たちだ。知り合いは1人もいないが、心強く感じた。

開演、即解脱

開演時間を数分過ぎたそのとき、SEとともに、期待感を抑えきれない信者の歓声が鳴り響く。

SE曲のタイトルが『ANGEL OF DEATH』というのが、実に彼女たちらしいではないか。

鎌田紘子(vo.木魚)と美月リカ(vo.シンギングボウル)が登場し、一曲目に披露されたのは『GET UP!解脱』。

タイトルはもちろんゲットアップと解脱をかけたダジャレであり、その時点でもう強制的に解脱するしかない。しかし、解脱すると幸福が訪れ、解脱しないと不幸が訪れるという内容の歌詞は、ユニット名通り宗教を揶揄するものだ。世の中いろんな宗教があるが、そのなかの98%くらいにケンカを売ってる感じだ。

10年前くらいに亡くなったうちの婆さんも「あんたが今不幸だと思ってることは、私の信じてる仏様に祈ればぜーんぶ気にならなくなる。一緒に祈ろう」的なことをずーっと言ってた。筆者は結局婆さんが亡くなるまで祈ることはなかったけど、宗教っていろいろあるんだなと思った。

一曲歌い終わって即ラストMC

「宗教法人マラヤです! みなさん下北沢SHELTERにお集まりいただきありがとうございます!」

その言葉から、15分ほどの長いMCに入った。持ち曲が6曲しかないことは知っていたので、長い時間MCをするであろうことは想像していた。そして、どんなことを喋るのかも。想像通り、これまでの活動を総括し、どのような意図があったかのヒントになる発言がたくさん出てきた。

「今まで”集会”と称してやっていたので、ワンマン”ライブ”というのは初めて」
「対バンもほぼ出てないし」
「今だから言いますけど、ほぼ断ってますからね」

つまり、宗教法人マラヤは自由で、奔放で、孤高であったということだ。彼女たちは普通のアイドルのように、対バンイベントで力をつけていく必要などなかった。グループを成長させるとか、規模を大きくしていくとか、そういうことが目的ではないからだ。「信者を、救う」それだけでよかった。

「CD1万枚プレスして、今売れているのがだいたい7千枚」
「今日ともう1本のラストライブで残り3千枚が売り切れるとは到底思えませんので、その後も手売りします」

と、ある種嬉しい(手売り)活動継続の宣言もあった。CDを1万枚プレスしたのが冗談でないことも強調していたが、手売りのみで7千枚売ったというのは本当にすごい。

「普段の集会に来たことがない、知らない人が手売りで買いに来てくれて、子どもとか、妊婦さんとか、彼女の代わりに彼氏が買いに来たとか……いろんな人が来てくれました。アイドルオタクとかいう次元じゃない。まさに宗教でした」

「アイドルとか音楽とか関係なく、壺のことを調べてた人がマラヤにたどり着いて、今日もライブに来てくれてるの!」という紹介には会場から拍手が起こった。奇跡のような出会いに、ワンドリンクのビールで乾杯。

「CD7千枚売ったってなってから大人が「考え直して、一緒にやりましょう」みたいな声かけてくること増えたけど、うちらは高尾山登るんで。近いうち高尾山のビアガーデンでイベントするかもしれない。誰にも縛られないのが教祖ですから」

解散に向けたライブなのに、今後の話ばかり出てくる。解散なんてものは、マラヤにとっては通過点に過ぎないのかもしれない。解散って文字、解脱に似てるし。

美月リカ「地下アイドルまとめにまとめられるくらいヤバい」

MCでは、CDの購入枚数特典の告知が続いた。

「50枚で、ラスト集会前の決起集会参加券。同じく50枚で今着てる衣装プレゼント。そして、100枚でリカちゃん家でホームパーティー。本当に住んでる家に行く。」
「信者だったらしょうがない、家に来てもいい!」
「家ってヤバくない?マジな家だよ」
地下アイドルまとめにまとめられるくらいヤバいよ。まとめてくれよ普通に」

ごめんなさい、こちらは地下アイドル総合サイトの方なんです。結局100枚購入した狂信者はいたのか確認していないが、たぶんいたと思う。金額は考えてはいけない。CDは6曲入り2000円とか考えてはいけない。

長いMCが終わり、残り5曲をぶっ続けでやる!と宣言する教祖。再びエンジンをかけなおす信者。

仕切り直し一曲目である『娑婆KA/RU/MA』は、マラヤの曲の中でも異彩を放っている。80年代の香りがする楽曲は平熱を装いながらもやけにエモーショナルで、歌詞はマトモ、というか、他の曲の歌詞が異常なだけなのだが、特に「閉経寸前でドシャブリの雨 来週誕生日」という歌詞には、妙な切なさがある。これも「マラヤを信じないと誕生日を誰からも祝われない」という未来の暗喩なのかもしれない。

続いての『仏像○○事件』(○○はサイト内検閲)は、もっと直接的な救いを描いた曲だ。簡単にまとめれば「お前を仏像で後ろからぶん殴って涅槃に送ってやる」と言っているわけだが、SHELTERに集ったほぼ全員がそれを望んでいると考えると笑っていいのかどうか。

ちなみに、↑のサムネイルに表示されているMV主演のマラヤオタの方も来場していた。この格好で。

世が世なら大炎上していたであろうし、今でもテレビやラジオでは絶対に流せないであろう『ぽわ』。「朝から麻原ベイベー」とか「ぽわされちゃう」とか言っても今の若い子たちには意味通じないのではないだろうか。むしろその方が良いのか。

THE 打ち込みという感じのドラムに乗せて「ぽわしないで ってずっと言ってたらきっと 壊しちゃうね」と韻を踏むサビが、これまたやけにエモい。意味なんて必要ないのだ。エモーションさえあればいい。

続いての『壺~TSUBO~』のみ、ネット上に音源がない。iTunesストアとかでも買えない。みんな、今こそ手売りのCDをなんとかして入手するのだ。この曲では50回以上に渡り「つぼ」という言葉を連呼しているのだが、これだけ連呼すれば8万円の壺も売れるという好例になったのではないだろうか。続く地下アイドルや宗教団体は参考にしてもらいたい。連呼は最高のマーケティングだ。

本編最後の曲は最新曲である『糸色文寸ネ申マーラー』。この曲は「解脱してる場合じゃない」「世界が終わるぞ」と、マラヤの終焉を予感させていた。唐突に挿入される男性ボーカルのラップも、「そもそもマーラーって何?」なんてことも、すべて置き去り。マラヤは「マジで世界を救うんだ!」という決意と、最前列の信者に「アンコールしてね」という小声の伝言だけを残し、去った。

アンコールして20秒で登場

予定調和のアンコールが始まり、たった20秒で再び姿を表した教祖たち。涙を隠しきれない信者たちにもらい泣きしそうだ、と冗談交じりに客いじりをするも、2人の目に光るものが少しだけあったことを、我々は忘れないだろう。

「人々はいずれ死んでいって、みんないなくなっていくんですが、(マラヤの)子どもじゃないですけど、CDがみなさんのところに残ればいいのかなと思います」というちょっといい話をしている最中に、誰かのケータイが鳴っていたのも良いアクセントだった。

アンコールは『壺~TSUBO~』、『娑婆KA/RU/MA』、『GET UP!解脱』の3曲。

 

人間は普段、脳の機能を10%しか使っていないというのは迷信らしいが、そんなこととは関係なく、信者たちは間違いなく普段使われていない脳の力を引き出していた。どこまでも上がっていくフロアのボルテージ。残り短い教祖たちとの時間を惜しむように、高く掲げられた拳。ラストソングとなった『GET UP!解脱』では、それまで終始笑顔で歌っていた美月リカが大きな手振りでフロアをアジテートする様子が印象的だった。「これでもう、本当に最後の曲なんだ」と、観ていてわかった。

信者たちのダブルアンコールを求める声援はいつまでも止むことがなかったが、そのまま宗教法人マラヤ”最初で最後のワンマンライブ”は終演した。

2017年7月26日 宗教法人マラヤ「宗教法人マラヤ集会(ワンマン)ツアー~教祖山篭りを見送る会~」セットリスト
1.GET UP!解脱
2.娑婆KA/RU/MA
3.仏像○○事件
4.ぽわ
5.壺~TSUBO~
6.糸色文寸ネ申マーラー
En.
1.壺~TSUBO~
2.娑婆KA/RU/MA
3.GET UP!解脱

グッバイ、ヤバい地下アイドル屋さん

マラヤの持ち曲6曲中、4曲に「ヤバい」という言葉が計17回出現する。便利な言葉だ。何がどうヤバいか説明しなくても、聞いたほうが勝手にヤバさを想像してくれる。そうやって不安を煽るのが悪質な宗教とかマルチ勧誘のやり方なのだが、それを清々しいまでにやってのけ、コミカルさと危険さを同居させた「ヤバい」アイドルが宗教法人マラヤだった。

どうやらこの日の物販と、阿佐ヶ谷ロフトAでのラスト”集会”にてCDは2千枚以上売れたようで、残り枚数は889枚となっている。異端だらけの地下アイドル界においても異端だった宗教法人マラヤ、「本当の最後」という新宿駅前での手売り。このCD、「宗教法人マラヤ Best Album」が、マラヤが残す唯一の聖典である。一家に一枚、いや十枚、百枚必要だと考えると、筆者は預金をすべて下ろして現地に向かう予定だ。ゲットアップ、解脱。

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